滲出性中耳炎とその治療
滲出性中耳炎とは
弱い毒性の細菌や菌の内毒素によって起こる中耳炎であり、幼児の難聴の最大の原因です。
病気が起こる要因として、細菌による感染に加えて、耳と鼻をつなぐ耳管の機能異常も関与しています。特に、幼児では、急性中耳炎の後、あるいは慢性副鼻腔炎 (蓄膿)に伴って発症し易いといわれています。鼻が悪いために、鼻すすりの習慣が滲出性中耳炎の発症にかかわっています。
滲出性中耳炎の症状
強い毒性の細菌による急性中耳炎では、発熱や痛みを伴うことが多いですが、滲出性中耳炎では炎症反応が弱いために発熱、痛みを生じることは余りありません。
主な症状は、中耳腔の滲出液のために鼓膜の振動が障害されて起こる難聴、耳の詰まった感じなどです。
幼児の難聴の原因として、最も頻度の高い病気ですが、症状を訴えることのできない年齢であることから、難聴の存在に周りで気づくことが必要です。
滲出性中耳炎の診断
症状、経過を問診し、鼓膜所見を観察します。当センターでは、電子ファイバースコープを用いて、詳細に観察すると共に、その所見をお見せし、この病気を理解いただくよう努めています。さらに、難聴の程度を純音聴力検査にて、鼓膜の動きをティンパノメトリーにて検査し、治療方針を決定、説明します。
滲出性中耳炎の治療
治療方針は、現在の難聴の程度、それまでの治療経過によっていくつかの段階に分かれます。
- 1. 軽度難聴(30dB以内)
- 難聴の程度が日常生活に支障ないレベルと考えられることより、保存的治療が中心です。
原因である上気道感染の治療+耳管通気 - 2. 30dB以上の難聴
- 原因である上気道感染の治療に加えて、難聴の改善を図る必要があります。
イオン麻酔、ボナン麻酔下+鼓膜切開、穿刺 - 3. 難治例
- 切開を繰り返しても再発する場合は中耳腔の換気、排液を目的として、鼓膜チューブを入れます。
鼓膜麻酔
鼓膜切開、穿刺、鼓膜チューブ留置を行う場合鼓膜麻酔を行い、痛みのコントロールを十分に行うことが重要です。その方法として、成人、あるいは小学校高学年では、ボナン氏液(パントカイン、メントール、フェノール、エタノールの混合液)による麻酔で可能であり、幼児の鼓膜切開では外耳道に麻酔液(4%キシロカイン)を注入、弱電流を流すことにより麻酔するイオントフォレーゼ法でほぼ無痛が得られます。幼児の鼓膜チューブ留置は、当センターでは全身麻酔による日帰り手術にて行っています。
鼓膜切開
鼓膜麻酔後、鼓膜切開刀にて切開を行います。目的は中耳腔の滲出液を除去することにより、難聴を改善させるとともに、切開孔を通して中耳腔の換気を行い、中耳の炎症の消退を図ります。切開孔は3日から1週間程度で閉鎖します。
鼓膜チューブ留置
鼓膜切開などの治療に抵抗する難治例では、中耳腔の持続的な換気を目的として、鼓膜にチューブを挿入します。幼児以外では鼓膜麻酔を行うことにより、外来にて可能ですが、幼児の場合は全身麻酔にて日帰り手術として行います。チューブには短期留置型(2-3ヶ月)と長期留置型(1年程度)があり、滲出性中耳炎の程度により選択します。チューブの抜去は外来で簡単に行えます。