花粉症について
花粉症、特にその対策、治療についてまとめてみました。花粉症対策は、症状の程度により様々です。マスクをして外出するなどご自分で出来るセルフケアで日常生活に支障のない患者さんから、手術的な治療が必要な患者さんまでいらっしゃいます。どんな時、どんな治療が適切かについて、我々の考えを紹介します。
花粉症対策【セルフケア】
花粉に触れない、なるべく身体に入ってこないようにする工夫が必要です。
- 1スギ花粉の飛散が多い日は外出を控えめにする
- 新聞、テレビで花粉飛散情報が日々伝えられます。 天気のいい日、風の強い日、前日が雨の場合など要注意といわれています。
- 2外出時にはマスク、めがねを
- 花粉防止用マスクは80~90%の花粉の侵入を防ぐといわれています。ただし、同じマスクを長期にわたって使用することは衛生面から考えてよいこととは言えません。
購入費用、その効果の両面から考える必要がありそうです。
めがねは、眼への花粉の侵入を防ぐ目的ですので、理想的にはスキーのゴーグル型が効果的です。 - 3花粉を室内に持ち込まない努力が必要です
- 外出時には、衣服などに花粉が付着しています。室内に入る前に衣服をよく払い、花粉を除去して下さい。
また、飛散が多い日に屋外で布団を干すことは避けてください。屋外で乾かした洗濯物を取り入れる場合も、花粉が付着していますのでよく落として下さい。
花粉症の治療方針
花粉症に対する服薬は、花粉が飛び始める2週間前より始める初期療法、症状が出てから始める導入療法、導入療法によってよくなった症状を維持するための維持療法に大別されます。
これらの治療法の選択、あるいは投薬内容は、患者さん一人一人で症状の強さや、その年の花粉の飛散量に影響されます。
1初期療法
症状が出てからでは薬が効きづらくなると言われています。従って、花粉が飛び始める2週間前から抗アレルギー薬の服用を開始、シーズン中も持続することにより、飛散後も症状がコントロールされやすく、楽にシーズンを乗り越えることが出来ます。主に、経口薬を継続して服用していただきますが、大量に花粉が飛散する場合は、経口ステロイド薬やステロイド点鼻薬を併用することがあります。
2導入療法
スギ花粉が飛散し、すでに強い症状が出てから始める治療法です。多くの患者さんは、症状が出てから来院されるので、この導入療法を行うことになります。具体的には、通常の抗アレルギー剤とともに、1週間ほど経口ステロイド薬を服用しますが、時にはステロイド点鼻薬も必要になります。
3維持療法
初期療法や導入療法にて症状が抑えられた状態を維持する治療で、通常の抗アレルギー剤を服用します。 いずれにせよ、通常の抗アレルギー剤が基本であり、症状の程度により経口ステロイド薬やステロイド点鼻薬を併用するということになります。
花粉症の手術治療
花粉症を含めたアレルギー性鼻炎に対する手術治療を紹介します。基本的には、抗アレルギー剤を服用するなどの治療が中心となりますが、次のような場合、手術治療の対象となります。
- 花粉症のシーズン中、薬を飲んでもくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状がかなり残って、生活に支障がある。
- スギ花粉だけでなく、ヒノキ花粉に対するアレルギーもあり、長期に薬を飲むことに抵抗がある。
- スギの飛散期間は症状が強いが、それ以外のシーズンもくしゃみ、鼻汁、鼻閉で困ることが多い。
- 鼻づまりが強く、点鼻薬をいつも使っている。
現在、サージセンターで行っているアレルギー性鼻炎に対する手術は次のようなものがあります。
これらは症状、鼻の中の状態で組み合わせて行います。
1レーザー手術(炭酸ガスレーザー手術またはアルゴン凝固術)+後鼻神経凍結手術
比較的軽いアレルギー性鼻炎に対する手術で、外来手術として局所麻酔下で行います。手術時間は20分程度で、その準備、術後の経過観察を入れて、約2時間の在院時間です。
レーザー手術 (下甲介焼灼術) は主にアレルギー反応が起こる下甲介の表面を焼灼する方法です。
焼灼により下甲介表面が瘢痕化 (固くなります) し、花粉などの抗原が認識されにくくなります。
後鼻神経は、花粉の刺激を脳に伝えたり、鼻汁の分泌を支配している神経で、後鼻神経の凍結手術によりこれらの働きが低下させ、さらに鼻汁分泌などのアレルギー反応を抑えることができると考えています。
下甲介焼灼である程度の鼻閉は改善しますが、その効果には限界があり、強い鼻閉でお困りの場合適応になりません。特に、鼻の中の中央の壁である鼻中隔に弯曲がある場合 (鼻中隔弯曲症) や、下甲介が高度に腫れている場合 (下甲介肥大) などが鼻づまりの原因と考えられる場合、次に述べる鼻中隔矯正術や粘膜下下甲介骨切除術を同時に行い、鼻の中の形を整える必要があり、外来手術ではなく入院手術となります。
2鼻中隔矯正術
鼻中隔とは鼻の中の真ん中にある壁で左右を隔てています。日本人の90%でどちらかに曲がっている、すなわち弯曲がありますが、鼻づまりがなければ治療の対象になりません。鼻中隔は軟骨と骨から構成されていますが、手術では弯曲している部分だけを切除し、まっすぐにします。鼻の外見が変化することはありません。
3粘膜下下甲介骨切除術
アレルギー反応が主に起こる下甲介が高度に腫れ、それが鼻づまりの明らかな原因となっている場合は、下甲介を小さくし、通路を大きくする必要があります。その方法として、直接下甲介粘膜を切除する方法 (鼻甲介切除術) と、下甲介の中にある下甲介骨を除去することによりその全体の大きさを小さくする方法 (粘膜下下甲介骨切除術) があります。サージセンターでは、より長期、効果が持続する粘膜下下甲介骨切除術を行っています。
4後鼻神経切断手術
後鼻神経は、花粉の刺激を脳に伝えたり、鼻汁の分泌を支配している神経です。1日に21回以上鼻をかむ場合は重症のアレルギー性鼻炎や、すでに下甲介焼灼術や後鼻神経に対する凍結手術を行ったにもかかわらず早期に症状が再発した場合など、後鼻神経に対する切断術を行います。
花粉症Q&A
花粉防止用マスクは効果的でしょうか
花粉の吸い込みを防ぐ効果を普通のマスク (風邪用) と花粉防止用のマスクで比較検討した結果では、普通のマスクは半分程度、一方花粉防止用マスクでは 80~90% の花粉の吸い込みを防ぐそうです。
セルフケアとして重要です。
スギ花粉だけでなくヒノキ花粉にも困っているのですが
スギ花粉とヒノキ花粉には共通の抗原性があり、どちらにも過敏性を示す患者さんが多いといわれています。スギ花粉の飛散時期が2月中旬から3月末ぐらいで、その後4月にヒノキ花粉が飛散します。従って、多くの患者さんが2月から4月末まで大なり小なりの症状を来たすのです。最近はスギの花粉情報に加えて、4月にはヒノキの花粉情報もマスコミから入手可能です。是非参考にしてください。
スギ花粉情報の利用はどのようにすればいいでしょうか
スギ花粉は、その季節一定の割合で飛散するのではありません。飛散期間の中でも幾日か大量に飛ぶ日があります。一般的には、雨の日の翌日、よく晴れて風の強い日が要注意といわれていますが、それだけでは予測は不十分です。花粉情報では、翌日から約1週間の飛散予測を伝えてくれます。花粉の飛散が多いとされる日には、外出を控える、防御を十分にして外出する、アレルギー反応を抑える薬を飲んでおくなどの予防に利用して下さい。
花粉症のお薬を飲むと眠たくなったり、口が渇いて困ります。いい薬はないですか
抗ヒスタミン薬と呼ばれるグループの薬は、副作用で眠気、口の渇き、さらには尿量が減少する人もいます。車を運転する人には、極めて危険な副作用です。現在、一般に使用されている花粉症のお薬の中には、抗ヒスタミン作用のない、眠気の少ない薬も開発されています。主治医の先生にご相談してください。また、場合によっては点鼻薬を使用することもあります。この場合、眠気とは関係ありません。
点鼻薬の種類、使用に際しての注意点を教えてください
点鼻薬には、ステロイド点鼻薬、抗ヒスタミン薬やケミカルメディエーター遊離抑制薬の点鼻薬、血管収縮薬などが現在使用されています。一般的には、抗ヒスタミン薬やケミカルメディエーター遊離抑制薬の点鼻薬が主に使用されています。飲み薬より眠気などの副作用が少なく、使用しやすい場合もあります。ステロイド点鼻薬は、当院では飲み薬で十分にアレルギー反応を抑制できない場合に追加しています。この場合も、全身へのステロイドの副作用はほとんどないと言われています。鼻づまりが強く、睡眠にも支障がある場合、血管収縮薬をお出しする場合があります。この点鼻薬は鼻づまりに対して即座に効果があるという点ではすばらしいのですが、使いすぎるとかえって鼻づまりが悪化する場合があり、その使用には注意が必要です。
妊娠を希望しています、どのように対処すべきでしょうか
一般的には、妊娠中免疫反応が亢進してアレルギー反応が強く出る、症状が悪化するといわれています。しかしながら、妊娠中、特に妊娠初期から4ヶ月半ばまでは薬を服用することは危険です。また、4ヶ月以降も出来るだけ飲み薬を避けたほうが安全です。対処法としては、スギの花粉症の場合、予定日を1月ぐらいに設定する方法もありますが、当院では妊娠前のレーザー手術をお勧めしています。レーザー手術により鼻のアレルギー反応を抑えておくことで、症状を軽く抑えたり、飲み薬の量を減らすことが可能と考えています。
スギ感症の場合、レーザー手術はいつ頃受ければいいですか
季節前に行うのが基本です。従って、スギ花粉が飛散する前の12月、1月が望ましいとされています。しかしながら、スギ花粉症の患者さんは、2月と3月に限定して症状が出る場合もありますが、4月に飛散するヒノキのアレルギーをお持ちの方も多く、また、5月から6月に飛散するイネ科の花粉にアレルギーもある場合、さらに一年中症状が出る可能性のあるほこり (ハウスダスト) にもアレルギーがある場合など、長期に渡って症状をお持ちの方も多くおられます。その場合、季節前に限ることなく、スギ花粉のシーズン中にもレーザー手術を行っています。
レーザー手術を希望したのですが、鼻の真ん中の壁 (鼻中隔) が曲がっているので難しいといわれました どのように対処したらいいでしょうか
鼻の真ん中の壁、鼻中隔が左右、どちらかに曲がっている場合、鼻中隔弯曲症といいます。レーザー手術を行う器具を鼻の中に入れて十分に下甲介の表面を焼灼することが出来ません。鼻中隔弯曲症がある場合、同時にその弯曲を直すことが必要です (鼻中隔矯正術) 。矯正術の意味は、レーザー手術を行うためだけではなく、鼻中隔の弯曲により生じている鼻づまりを改善する意味もあります。当院では、これらの手術を2日間の入院にて行っています。
レーザー手術を受けたいと思いますが、どのような手順になりますか
まずは、診察させていただき、その適応を判断します。適応と判断された場合、手術日、来院時間の予約 (外来手術は、当院では主に木曜日行っています) を行います。当日、来院された後、外来で鼻の中に痛み止めがしみこんだガーゼを入れ、30分ほど病室で休んでいただきます。30分経って、痛みが取れた後、手術室で下甲介の焼灼、後鼻神経の凍結手術を行いますが、手術時間は20分程度です。その後、病室で30-60分、休んでいただき、出血、痛みがないかを確認、退院となります。全体で2時間程度です。
レーザー手術を受けた後の経過を教えてください
レーザー手術は、鼻の中の粘膜を焼く方法です。従って、やけどと同じように手術の後粘膜が腫れたり、液が滲みだしてきます。レーザー手術を受けた後、2-3日は粘膜の腫れにより鼻づまりが、液が滲み出すことにより鼻水がたくさん出ます。1週間もすればこれらの症状はかなり改善し、個人差はありますが大体3週間程度で傷がなおり、かさぶたも消失するといわれています。