声のかすれ、声が出にくい原因
ガラガラ声やしわがれ声、ハスキーボイス、弱々しい声など、普段と異なる声のかすれは、医学用語で嗄声(させい)と呼ばれます。喉にある喉頭(こうとう)という器官には、声帯があります。息を吸い込む時には声帯が開きますが、発声時には声帯が閉じ、息を吐く時の圧力によって声帯が振動することで声を出しています。声帯に何らかの異常が起こることで、声のかすれが起こります。
風邪のような炎症が原因の場合もありますが、風邪などの症状がないのに声のかすれが続く場合、声帯ポリープや声帯結節、喫煙が関係している喉頭がん、甲状腺がんによる神経麻痺(まひ)、加齢による声帯萎縮(いしゅく)などが考えられます。風邪による喉の炎症がきっかけになって声帯ポリープや声帯結節ができる場合もあります。放置すると治らないだけでなく悪化する可能性が高いので、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
声帯ポリープ
主な症状は嗄声で、息が漏れる感じがしたり、やや低音になることが多く、発声の途中で声がとまる場合もあります。とてもまれにしか起きませんが呼吸困難になる場合もあります。声を使う職業の方に多く、喉に力を入れて発声するなど発声法が悪かったり、喫煙する方も声帯ポリープができやすい傾向にあります。
声の酷使や炎症によって声帯の粘膜が充血し、それでも声を酷使し続けると血腫ができます。ここで声を使わないようにしたら血腫が自然に吸収されますが、酷使をさらに続けるとポリープになってしまいます。ポリープが邪魔をして声帯がうまく閉じなかったり、振動に悪影響を与えることで症状の嗄声が起こります。手術内容も含めた詳しい治療法については、こちらをご覧ください。
声帯結節
主な症状が嗄声であり、声を使う職業の方に多いことは声帯ポリープと同じですが、声帯結節は幼いお子さんにも発生することがよくあります。日によって声の調子に波があり、長く話していると声が出にくくなるケースが多く、喉の痛みという症状が出る場合もあります。
声帯に機械的な刺激が続くことで、声帯の粘膜の下に体液が溜まったり、線維化が起こって結節となります。ペンダコのようなものが声帯にできるのだと考えると理解しやすいと思います。声が出にくい状態で無理に声を出すと悪循環で結節ができやすくなります。結節ができてその部分が硬くなると、振動がうまくコントロールできなくなり、また声帯がうまく閉じなくなるため声のかすれが起こります。手術内容も含めた詳しい治療法については、こちらをご覧ください。
反回神経麻痺
反回神経は、喉の周辺をコントロールしている神経であり、声帯の開け閉めも反回神経によって行われています。そのため、反回神経に何らかのダメ-ジを受けると声帯がうまく開閉しなくなって声のかすれが起こります。また、食べ物が気管に入る誤嚥(ごえん)なども起こりやすくなります。声帯が閉じた状態で麻痺してしまうと、呼吸困難に陥る危険性もあります。
反回神経は脳幹から枝分かれした神経であり、胸郭内に入ってから食道の両側や甲状腺の裏側を通った後に、声帯の筋肉につながるという複雑な経路を持っており、そのどの部分にダメージがあっても声帯に影響が及ぶ可能性があります。腫瘍やがん、がんのリンパ節転移、弓部大動脈瘤など重大な病気が関わっていることも考えられるため、徹底的に原因を調べていち早く適切な治療を受けられるようにする必要があります。
声帯萎縮
声帯の容積が減少することで、うまく閉じられなくなることで、嗄声の他、声が出しにくかったり、発声が弱弱しくなるなどの症状を生じます。原因となるのは声帯麻痺や声帯溝症などの病気の他、加齢によって全体が委縮する変化の場合もあります。声帯溝症は、粘膜の縁に溝ができますが、先天的なものと炎症などから生じるものがあります。
喉頭がん
飲酒や喫煙との関連性が高く、特にヘビースモーカーにとって要注意のがんです。そのため男性が圧倒的に多くなっています。耳鼻咽喉科では最も発生率の多いがんであり、声のかすれが2週間以上続いている場合、耳鼻咽喉科では喉頭内視鏡を使って実際に発声している声帯を観察し、喉頭がんでないかを確かめています。
初期症状は声のかすれですが、進行すると飲食物を飲み込む時や呼吸時に違和感が出てくる場合があります。ただし、こうした症状がないままリンパ節に転移し、首にしこりができてから気付く場合もありますので注意が必要です。
声のかすれ、声が出にくい病気の治療法
声帯ポリープ
発声を控え、炎症を抑える保存治療を行います。改善しない場合やポリープが大きい場合には、手術を検討します。手術を行っても、発声法が悪ければ再発する可能性が高いため、正しい発声法を覚えることも重要です。手術内容も含めた詳しい治療法については、こちらをご覧ください。
声帯結節
声帯ポリープと同じ治療法を行います。手術内容も含めた詳しい治療法については、こちらをご覧ください。
反回神経麻痺
内視鏡で声帯の動きを観察して診断し、原因を特定するためにCTや内視鏡による検査を行います。重大な病気が原因となっている場合があるため、声のかすれの治療より原因となっている病気の治療を優先します。
声帯萎縮
内視鏡検査で診断します。保存治療では、音声治療で声帯に強い力をかけられるようにする訓練を行います。手術では、アテロコラーゲンや自家脂肪などを声帯内に注入する治療なども可能です。手術を受けた際にも、その後音声治療を行う必要があります。
喉頭がん
喉頭内視鏡を使って実際に発声している声帯を観察して診断します。症状の程度や患者さまの状態に合わせて、吸入や投薬による保存的治療、声の出し方を指導する音声治療、手術などを組み合わせ、最適な治療を行います。比較的発見が容易で、早期治療もしやすいため、がんを治すことはもちろんですが、声を出す・飲み込む・呼吸する機能の温存も重視した治療を行います。