鼻中隔弯曲症の手術療法
手術が必要なケース
手術内容
曲がっている部分の鼻中隔軟骨を切除して、まっすぐな部分だけに整える手術です。
肥厚性鼻炎を併発している場合には、飛び出している骨を削る粘膜下下甲介骨切除術と、分厚くなった粘膜を削る鼻甲介粘膜切除術も同時に行います。また、慢性副鼻腔炎を合併している場合には、その手術を同時に行うこともあります。
なお、曲がって内側に出っ張った部分だけを取り去りますので、手術後の鼻の高さに変わりはありません。また、鼻腔の中にできる手術痕は傷が治れば全くわからなくなります。
顔面の骨格が完成する前にこの手術を受けると、成長に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、19歳以上の成人が受けられる手術となっています。
この手術のリスクとして、術後出血、鼻中隔に穴が残る鼻中隔穿孔、鼻がへこむ「鞍鼻(あんび)」などがあります。そのため、手術は信頼できる医療機関で受けることが重要です。
内視鏡下鼻内整復術-A:鼻中隔矯正術
内視鏡下鼻内整復術-B:粘膜下下甲介骨切除術
鼻中隔弯曲症の手術の流れ
鼻中隔弯曲症の手術の流れ
- 局所麻酔(日帰り手術)、全身麻酔(入院手術)にかかわらず、手術中の鎮痛や止血効果を目的として、局所麻酔とガーゼ麻酔を行います。局所麻酔では苦味を感じたり、一時的に動悸が激しくなりますが、すぐに収まっていきます。
- 鼻中隔粘膜を観察し、曲がって飛び出ている方の鼻中隔粘膜をメスで切開します。
- 粘膜を傷付けないように軟骨膜下と骨膜膜下を丁寧に剥離します。
- メスで鼻中隔軟骨を切開し、粘膜と軟骨を剥離します。
- 鼻中隔軟骨や骨の曲がっている部分を切除します。必要に応じて、鼻中隔の下の部分にある骨を少し削る場合もあります。骨から軟骨を外して骨だけ削る場合、軟骨をくり抜く場合、いったん軟骨を外して形を整えてから戻す場合があり、弯曲の状態や程度、場所などによって選択します。
- 止血後、鼻中隔粘膜を縫合します。これで鼻中隔はまっすぐになりますが、必要がある場合には、粘膜下下甲介骨切除術と鼻甲介粘膜切除術を続いて行います。鼻中隔弯曲症の手術だけの場合には、両側から患部を圧迫し、傷からの出血を防ぐため、両方の鼻の穴にスポンジをしっかり詰めて終了です。スポンジの中には、息をするためのシリコンチューブが入っており、それにより、手術の後の完全な鼻詰まりを回避します。
粘膜下下甲介骨切除術と下鼻甲介粘膜切除術の流れ
- 鼻鏡で下甲介粘膜を観察し、下甲介粘膜前端部をハーモニックスカルペルで切開します。
- 粘膜と下甲介骨を剥離子で丁寧に剥離し、余分な下甲介骨を切除します。粘膜が分厚くなっている場合には、下鼻甲介粘膜切除術で必要に応じて粘膜を切除します。
- 粘膜を縫って、止血後、下甲介粘膜前端部を縫合します。
- 術後は両側から患部を圧迫、止血するため、両方の鼻の穴に鼻呼吸するためのシリコンチューブが入ったスポンジをしっかり詰めます。
術後の注意点
二次感染を防ぐために、安静にして、抗菌薬を服用します。
日帰り手術(局所麻酔)あるいは1泊2日(全身麻酔)で行いますが、どちらの場合でも、手術後傷の圧迫、止血のために鼻内にスポンジが入っています。スポンジの中には、息をするためのシリコンチューブが入っていますが、血液が固まって完全に詰まってしまうこともあります。
手術後鼻内に入れたスポンジは、翌日取ります。日帰り手術(局所麻酔)の場合、翌日のご来院が必要であり、全身麻酔で1泊2日の入院の場合は入院中に行い、退院時には原則として、鼻の中には何も入っていません。
手術を受けた日の夜から、通常通りの食事をして構いません。
手術で軟骨や削った分、鼻中隔軟骨は弱くなりますので、鼻に強い衝撃を受けると鼻中隔軟骨が落ち込む可能性があります。手術後は鼻に強い力が加わらないよう注意しましょう。
手術内容や費用に関するQ&A
日帰り手術、あるいは1泊2日の手術ではどのくらいの時間がかかりますか?
手術自体は約1時間です。日帰り手術の場合、さらに手術後の注意点に関するご説明、麻酔や点滴などの準備、そして手術後の安静が必要となりますので、ご来院からご帰宅までの時間は、3~4時間が目安です。1泊2日の全身麻酔の場合、手術の2-3時間前に入院、麻酔医の診察を受け、手術となります。翌日朝、鼻内のスポンジを取り、午後まで出血、痛み、発熱などがない事を確認、して退院となります。
痛みはありますか?
日帰りによる局所麻酔手術の場合、:鼻の中に局所麻酔の注射を行いますので、その際にチクッとした痛みがあります。局所麻酔なので全くの無痛ではなく、押される感覚などはあります。手術後の痛みも軽度です。痛みが気になる場合には、処方された鎮痛薬を飲みます。強い痛みを感じることはありません。
全身麻酔では、もちろん手術中の痛みは全くありません。手術3時間後には、痛みに対して鎮痛薬を飲むことが可能となりますが、ほとんどの場合強い痛みはありません。
危険性にはどのようなものがありますか?
手術による危険性及び合併症としては、出血や鼻中隔の穿孔、鼻がへこむ鞍鼻などがあります。経験豊富な専門医による手術であれば、こうした合併症が起こる頻度は非常にまれです。なお、鼻中隔穿孔は鼻の機能にほとんど影響を与えることはありません。
局所麻酔での日帰り:手術後の過ごし方を教えてください
手術を受けた後は、約1-2時間、ベッドで安静にして過ごし、その後にご帰宅となります。手術終了時に鼻に入れたスポンジは、翌日外来にて取ります。ご来院時間は、退院時に相談いたします。手術当日は、抗生剤と鎮痛薬を処方しますが、痛みが強くなければ鎮痛薬を飲む必要はありません。また、手術当日の飲酒や入浴は禁止ですが、食事制限はありません。
手術終了時に鼻に入れたスポンジには、息をするためのシリコンチューブが入っています。ほとんどの場合、そのチューブにより、帰宅後も鼻呼吸は可能ですが、血液で詰まる場合もまれにあります。
血液の混じった鼻水が続く場合、綿栓をしていただきます。この綿栓はご自宅で交換いただきますが、最初血液が多く、その後徐々に鼻汁が主になっていきます。
仕事はどのくらい休まないといけませんか?
仕事の内容によって変わりますが、局所麻酔日帰り手術では、手術日と翌日の2日間、全身麻酔入院手術では、入院2日間と退院後の1日、合計3日お休みいただくことをお勧めしています。
費用はどの位ですか?
全て健康保険適用です。
内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術)6,620点(自己負担額19,860円)
内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)7,940点(自己負担額23,820円)
※下鼻甲介手術は両側行う必要があるため、倍の費用が必要になります。
日帰り局所麻酔では、内視鏡下鼻中隔手術に、両側の下鼻甲介手術を受けた場合、合計は67,500円となり、再診料、処方料などが加わって手術当日にお支払いただくのは約7万から8万円程度となります。下鼻甲介粘膜切除術を同時に受けても同じ金額です。
1泊2日入院の全身麻酔手術では、全身麻酔費用、入院食事費用などが加わるため、概算としてお伝えするのは約135,000円となります。なお、従来の1週間入院で受けた手術の場合、病院によっても変わりますが、15~20万円ほどの費用となります。
保険会社の手術給付金対象になっていますか?
保険会社や契約内容によって異なりますので、契約している保険会社に確認する必要があります。保険会社では手術をKナンバーという記号で管理しているので、それを伝えるとスムーズです。
内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術)のKナンバー:K347-3
内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)のKナンバー:K347-5