鼻中隔弯曲症の手術について

鼻中隔弯曲症の手術療法

鼻中隔は左右の鼻腔を隔てる仕切りで、本来は凸凹がなく平らなものですが、成長に伴って軟骨が歪んだり、骨と軟骨がズレたりすることで曲がってしまい、一部が鼻腔に張り出しているような状態になることがあります。成人のほとんどに鼻中隔の弯曲がありますが、日常生活に支障がなければそのままで問題はありません。鼻中隔の弯曲が大きく、さまざまな症状がある場合や、QOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)を下げている場合には治療が必要になります。鼻詰まりなど鼻中隔弯曲症によって起こっている個々の症状を治す保存療法もありますが、鼻中隔の弯曲を根本的に治すためには手術しかありません。

手術が必要なケース

鼻詰まりがひどい、鼻血が出やすい、口呼吸になっている、睡眠時無呼吸の合併がある、嗅覚や味覚に障害がある、脳への酸素不足により頭痛や片頭痛がある、保存療法で改善しない、副鼻腔炎を併発しているなどの場合、手術をお勧めしています。局所麻酔による日帰り手術(滞在時間4時間程度)か、全身麻酔による1泊2日の入院手術が可能です。

手術内容

曲がっている部分の鼻中隔軟骨を切除して、まっすぐな部分だけに整える手術です。
肥厚性鼻炎を併発している場合には、飛び出している骨を削る粘膜下下甲介骨切除術と、分厚くなった粘膜を削る鼻甲介粘膜切除術も同時に行います。また、慢性副鼻腔炎を合併している場合には、その手術を同時に行うこともあります。

なお、曲がって内側に出っ張った部分だけを取り去りますので、手術後の鼻の高さに変わりはありません。また、鼻腔の中にできる手術痕は傷が治れば全くわからなくなります。
顔面の骨格が完成する前にこの手術を受けると、成長に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、19歳以上の成人が受けられる手術となっています。

この手術のリスクとして、術後出血、鼻中隔に穴が残る鼻中隔穿孔、鼻がへこむ「鞍鼻(あんび)」などがあります。そのため、手術は信頼できる医療機関で受けることが重要です。

内視鏡下鼻内整復術-A:鼻中隔矯正術

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内視鏡下鼻内整復術-B:粘膜下下甲介骨切除術

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鼻中隔弯曲症の手術の流れ

鼻中隔弯曲症の手術の流れ

  1. 局所麻酔(日帰り手術)、全身麻酔(入院手術)にかかわらず、手術中の鎮痛や止血効果を目的として、局所麻酔とガーゼ麻酔を行います。局所麻酔では苦味を感じたり、一時的に動悸が激しくなりますが、すぐに収まっていきます。
  2. 鼻中隔粘膜を観察し、曲がって飛び出ている方の鼻中隔粘膜をメスで切開します。
  3. 粘膜を傷付けないように軟骨膜下と骨膜膜下を丁寧に剥離します。
  4. メスで鼻中隔軟骨を切開し、粘膜と軟骨を剥離します。
  5. 鼻中隔軟骨や骨の曲がっている部分を切除します。必要に応じて、鼻中隔の下の部分にある骨を少し削る場合もあります。骨から軟骨を外して骨だけ削る場合、軟骨をくり抜く場合、いったん軟骨を外して形を整えてから戻す場合があり、弯曲の状態や程度、場所などによって選択します。
  6. 止血後、鼻中隔粘膜を縫合します。これで鼻中隔はまっすぐになりますが、必要がある場合には、粘膜下下甲介骨切除術と鼻甲介粘膜切除術を続いて行います。鼻中隔弯曲症の手術だけの場合には、両側から患部を圧迫し、傷からの出血を防ぐため、両方の鼻の穴にスポンジをしっかり詰めて終了です。スポンジの中には、息をするためのシリコンチューブが入っており、それにより、手術の後の完全な鼻詰まりを回避します。

粘膜下下甲介骨切除術と下鼻甲介粘膜切除術の流れ

  1. 鼻鏡で下甲介粘膜を観察し、下甲介粘膜前端部をハーモニックスカルペルで切開します。
  2. 粘膜と下甲介骨を剥離子で丁寧に剥離し、余分な下甲介骨を切除します。粘膜が分厚くなっている場合には、下鼻甲介粘膜切除術で必要に応じて粘膜を切除します。
  3. 粘膜を縫って、止血後、下甲介粘膜前端部を縫合します。
  4. 術後は両側から患部を圧迫、止血するため、両方の鼻の穴に鼻呼吸するためのシリコンチューブが入ったスポンジをしっかり詰めます。

術後の注意点

二次感染を防ぐために、安静にして、抗菌薬を服用します。
日帰り手術(局所麻酔)あるいは1泊2日(全身麻酔)で行いますが、どちらの場合でも、手術後傷の圧迫、止血のために鼻内にスポンジが入っています。スポンジの中には、息をするためのシリコンチューブが入っていますが、血液が固まって完全に詰まってしまうこともあります。

手術後鼻内に入れたスポンジは、翌日取ります。日帰り手術(局所麻酔)の場合、翌日のご来院が必要であり、全身麻酔で1泊2日の入院の場合は入院中に行い、退院時には原則として、鼻の中には何も入っていません。
手術を受けた日の夜から、通常通りの食事をして構いません。
手術で軟骨や削った分、鼻中隔軟骨は弱くなりますので、鼻に強い衝撃を受けると鼻中隔軟骨が落ち込む可能性があります。手術後は鼻に強い力が加わらないよう注意しましょう。

手術内容や費用に関するQ&A

日帰り手術、あるいは1泊2日の手術ではどのくらいの時間がかかりますか?

手術自体は約1時間です。日帰り手術の場合、さらに手術後の注意点に関するご説明、麻酔や点滴などの準備、そして手術後の安静が必要となりますので、ご来院からご帰宅までの時間は、3~4時間が目安です。1泊2日の全身麻酔の場合、手術の2-3時間前に入院、麻酔医の診察を受け、手術となります。翌日朝、鼻内のスポンジを取り、午後まで出血、痛み、発熱などがない事を確認、して退院となります。

痛みはありますか?

日帰りによる局所麻酔手術の場合、:鼻の中に局所麻酔の注射を行いますので、その際にチクッとした痛みがあります。局所麻酔なので全くの無痛ではなく、押される感覚などはあります。手術後の痛みも軽度です。痛みが気になる場合には、処方された鎮痛薬を飲みます。強い痛みを感じることはありません。
全身麻酔では、もちろん手術中の痛みは全くありません。手術3時間後には、痛みに対して鎮痛薬を飲むことが可能となりますが、ほとんどの場合強い痛みはありません。

危険性にはどのようなものがありますか?

手術による危険性及び合併症としては、出血や鼻中隔の穿孔、鼻がへこむ鞍鼻などがあります。経験豊富な専門医による手術であれば、こうした合併症が起こる頻度は非常にまれです。なお、鼻中隔穿孔は鼻の機能にほとんど影響を与えることはありません。

局所麻酔での日帰り:手術後の過ごし方を教えてください

手術を受けた後は、約1-2時間、ベッドで安静にして過ごし、その後にご帰宅となります。手術終了時に鼻に入れたスポンジは、翌日外来にて取ります。ご来院時間は、退院時に相談いたします。手術当日は、抗生剤と鎮痛薬を処方しますが、痛みが強くなければ鎮痛薬を飲む必要はありません。また、手術当日の飲酒や入浴は禁止ですが、食事制限はありません。
手術終了時に鼻に入れたスポンジには、息をするためのシリコンチューブが入っています。ほとんどの場合、そのチューブにより、帰宅後も鼻呼吸は可能ですが、血液で詰まる場合もまれにあります。
血液の混じった鼻水が続く場合、綿栓をしていただきます。この綿栓はご自宅で交換いただきますが、最初血液が多く、その後徐々に鼻汁が主になっていきます。

仕事はどのくらい休まないといけませんか?

仕事の内容によって変わりますが、局所麻酔日帰り手術では、手術日と翌日の2日間、全身麻酔入院手術では、入院2日間と退院後の1日、合計3日お休みいただくことをお勧めしています。

費用はどの位ですか?

全て健康保険適用です。

内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術)6,620点(自己負担額19,860円)
内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)7,940点(自己負担額23,820円)

※下鼻甲介手術は両側行う必要があるため、倍の費用が必要になります。

日帰り局所麻酔では、内視鏡下鼻中隔手術に、両側の下鼻甲介手術を受けた場合、合計は67,500円となり、再診料、処方料などが加わって手術当日にお支払いただくのは約7万から8万円程度となります。下鼻甲介粘膜切除術を同時に受けても同じ金額です。
1泊2日入院の全身麻酔手術では、全身麻酔費用、入院食事費用などが加わるため、概算としてお伝えするのは約135,000円となります。なお、従来の1週間入院で受けた手術の場合、病院によっても変わりますが、15~20万円ほどの費用となります。

保険会社の手術給付金対象になっていますか?

保険会社や契約内容によって異なりますので、契約している保険会社に確認する必要があります。保険会社では手術をKナンバーという記号で管理しているので、それを伝えるとスムーズです。
内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術)のKナンバー:K347-3
内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)のKナンバー:K347-5